1. はじめに
マズラプです。229回目の投稿になります。
今回は、ライトノベル「ステラ・ステップ」を読んだ感想を書いていきます。
※ネタバレありです
この作品を読み終わったあと「『救いはないのですか…?」は、こういう作品を読んだときに使う言葉なんだな」と思いました…。
そんな本作品を読んで特に印象に残った以下の3つを挙げていきます。
①物事の儚さを感じさせる『アイドルの形骸化』
②全ての感情を持っていったエピローグ
③読んでいて心地よくなるオシャレな文章表現
どちらかというと、作品の紹介というよりは、感想や感じた魅力を書いて発信することで、少しでも作者の方の励みになればいいなというような趣旨の記事になっています。
作者の 林星悟 先生並びに関係者のみなさんに届け!この思い!
作者の方に関わらず、読んでいただけるととても嬉しいので、どうぞ読んでいってください。
2. 「ステラ・ステップ」を読んで特に印象に残ったこと3選
①物事の儚さを感じさせる『アイドルの形骸化』
1つ目は、戦争の手段となったアイドルの変わり果てた姿が印象に残りました。
本作品の序盤では、戦争の道具となったアイドルの姿が描かれています。
その姿が、私の知っているアイドルとはあまりにもかけ離れていて、非常に印象的でした。
戦争の役目を担っているため、勝ち負けをつける必要がある。
勝ち負けをつけるために採点基準が存在する。
ステージでは点数を上げる可能性のない行為も下げる可能性のある行為も不要であるため、排除されていく。
だから笑顔も気持ちも必要ない。
それが本作品における、戦争の道具として使われるアイドルの実情でした。
「感情によるパフォーマンスのブレを最小限まで減らし、毎回全く同じ歌とダンスを『再演』できるレインが最強」ということには、なんだか虚しさを感じてしまいました。
歌って踊ることは変わらないはずなのに、「勝敗をつける」ただそれだけのことで、全くの別物になってしまった、そんな印象を受けました。
何か1つが変わってしまうだけで、物事はここまで変わってしまうんだということを見せつけられ、物事の儚さというか無力さというか、そんなことを感じました。
②全ての感情を持っていったエピローグ
2つ目は、エピローグのジェットコースター展開が印象に残りました。
やはりこの作品を語る上で欠かせないのは、エピローグでしょう。
レインを救ってくれたハナが、人ではなく、一花を治療するために作られた人形だったのです。
挿絵を見たとき、思わず私もレインと同じように「え?」と困惑してしまいました。
人との出会いによって救われたと思ったのに、ただの薬効作用だったなんて…
救いがなさすぎませんか…?
ハナを薬になんてさせないと声を荒げるレインの姿は、自分の最大の心の拠り所に必死に縋ろうとするようにも見えてしまい、居た堪れなくなりました。
ハナとの出会いでレインは自分に足りないものが見えてきて、でも星眩みの事実に絶望して、それでもハナに救われ一緒に世界を壊そうと一歩踏み出したのに…
最後には急降下で終わってしまうなんて…
こんなことを思ってしまうのは無粋だと思います。
でも、心が温かくなったままで終わって欲しかった、そう思わずにはいられませんでした…。
星眩みの治療法はないことや、レインが他のアイドルを星眩みにしていたことなどはレインを絶望の淵に叩き落とすには十分すぎる内容で、フレアとの戦舞台も敗北に終わったため、流石にもう落とすような展開はないだろうと思っていました。
それがまさか最後にこんな落とし方をするなんて…
本作品を読んでいて「アイドルたちが石になってまでもなおこき使われてしまっていた事実はあまりにもつらいなあ」とか「泣くことすら許されないというのはあまりにもつらすぎる」とか「レインのアイドルをしたいという気持ちは心からのもので胸が温かくなった」とか、そういったさまざまな感想を抱いていたわけですが、エピローグを読んで全て吹き飛んでしまいました笑
もはやジェットコースターというよりもフリーフォールかもしれません(迷言)。
③読んでいて心地よくなるオシャレな文章表現
3つ目は、秀逸な比喩がふんだんに使われた文章表現が印象に残りました。
本作品において、文章表現もまた特筆すべき点の一つだと感じました。
適切な表現か分かりませんが、本作品の文章は、読んでいてとにかくオシャレだなと感じました。
中でも一番好きなのは、ハナの「雨雲の中に忘れ物をしちゃったなら、虹を渡って拾いに行けばいいんです」という言葉です。
「雨雲の中にはもう取りに戻ることはできない」に沿った比喩表現が用いられているかつ、捨ててしまったものを取り戻すための的確で心温まる解答になっていたことが、とても印象的でした。
思わず「天才か…?」と漏らしていました笑
また、比喩表現ではありませんが、
・本名が『あめ』だから、アイドルネームが『レイン』
・『愛夢』と書いて『あめ』と読ませる
・本名ではなくアイドルネームを使うようになったとき、つまり「愛夢」と名乗らなくなったときと同時期に、重荷になるからと『愛』と『夢』を捨てたと語れれている
といった部分も、掛詞のような面白さがあってとても好きです。
こういった言葉で紡がれるハーモニーを楽しめるのも、小説を読む醍醐味だなと、改めて感じることができました。
3. おわりに
今回の内容は以上になります。ここまで読んでいただきありがとうございました。
余談ですが、本作品のあとがきを読んでいて「本作の構想は某アイドルコンテンツの無観客イベントを目にした衝撃から生まれた」という部分が印象に残りました。
実は私も「ラブライブ!」というコンテンツを楽しんでいます。
そしてそのラブライブ!における「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」の2ndライブも、無観客ライブでした。
そんなことを考えていたら、なんだか本作品が他人事とは思えなくなりました。
そんなわけで、これからのレインとハナのアイドル活動も楽しみながら読んでいこうと思います。
…まさか某アイドルコンテンツってラブライブ!のことですか…!?
では、今後もよろしくお願いします。
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