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【感想】『葬式百合アンソロジー』収録全話感想 〜「文学フリマ東京40」購入作品感想その1〜

マズラプです。293回目の投稿です。

今回は『葬式百合アンソロジーの感想を書いていきます。

本作は、文学フリマ東京40にて、『百合作家交流サークルはなびら』から頒布された作品です。

 

作品情報、出店者情報は以下の通りです。

c.bunfree.net

 

本記事では『葬式百合アンソロジー』に収録された作品全ての感想を書いています。

 

『葬式✖️百合』というテーマは、私の好みと相性がよく、非常に楽しめました。

中でも『春のあいだに咲いていて』が1番好きです。

 

本記事は、感想を発信することで、少しでも作者の方の励みになればいいなという思いで書いています。

作者の方々に届いてくれたのなら、嬉しい限りです。

 

作者の方に関わらず、読んでいただけるととても嬉しいので、どうぞ読んでいってください。

 

(※本記事は『寄稿者紹介』まで読んでから書いているため、その内容による考察も含まれています。)

 

『葬式百合アンソロジー』収録全話感想

残されたもの

葬式のイメージにふさわしい、静かで切ない雰囲気の作品でした。まさに本テーマの1作目にふさわしいなと感じました。

その一方で、内容は『葬式のない地域の話』という変化球だったというのも、また印象深かったです。

 

 

まず本作を読んでいて『関係性を定義する言葉による微妙なニュアンスの違い』を感じました。

 

加古は連れていく相手として、陽菜ではなく藤花を選びました。

しかしそれは、陽菜のことを大切に思っているがゆえの選択とも捉えられるのではないでしょうか。

「陽菜は、自分にとって一番大切な存在だから、まだ生き続けてほしい。だから、ともに死にゆく役回りは親友に引き受けてもう。」みたいなイメージです。

このことは「親友、妹的存在、大切な人」それぞれの表現での、微妙に異なるニュアンスを表現しているのかもなと思いました。

「憧れの先輩に想いを寄せる主人公、でもその先輩には親しい同級生がいる三角関係」という構図からも、立ち位置を定義する言葉を意識しているように感じます。

 

 

そして本作は、生きていく上で生じる変化や葛藤と、死後の世界の性質を合わせ『死後に希望を持たせる』物語だったのかなと感じました。

 

検索の末、薄黄色の粉は『抹香』なのではないかと思いました。

そして、抹香の意味として、興味深い内容を見つけたのです。

また、参列者にとっても、静かに香りを味わうことで心を清め、故人の在りし日を偲ぶ大切な時間となります。

(葬儀における抹香の役割と意味 | 終活図書館より引用)

 

本作における故人の在し日々とは「加古との思い出」を指すと考えられます。

もっと言うと「先輩後輩とか親友とか恋人とか、そんなしがらみのない、ただ楽しかった日々」の思い出なのではないかと思いました。
そしてそんな日々を指すものを手渡したということは「ただ無邪気に触れ合い楽しかったあの日々に戻ろうね」という想いが、込められているのではないでしょうか。

 

「また3人で一緒に遊ぼう」からの一連の会話は「あのただ楽しかった日々に戻ろう」という旨の内容と捉えられます。

実は加古や藤花も、今のような関係に変化してしまったことを、憂いていたのかもしれませんね。

そして陽菜の「生きているうちは許さない」は、「死んだら許す=死んだら、無邪気だったあのころに戻って、一緒に遊ぼう」とも捉えられます。

こんな発言をするということは、今の段階ですでに許してしまっているとさえ言えますね。


死んでしまえば、成長や関係性の変化、終わりとは無縁です。したがって死後の世界は「真の意味でのより良い関係を、ずっと続けられる世界」とも捉えられます。

本作は「死後の世界で出会い、また3人でただ楽しかっただけの関係に戻ろう」そんな希望が含まれた物語だったのかなと、解釈しました。

 

そして本作のタイトル『残されたもの』とは、「ただ楽しかった日々の思い出」であり、「その日々にまた戻れるかもしれないという希望」を指しているのではないかと考えました。

 

(※あくまで個人の感想です。)

 

白い葬式

個人的に好きな感情を得られた作品でした。

 

「両想いだったのに、もうその事実を相手には伝えられない」という状態が、とても苦しくて好きです。

両想いだったことによる嬉しさが強いがために、より苦しくなる味わいですね。

「あなただけを想っていたことが罰を受けた原因だとしたら仕方ない」とまで思えているのに、その想いが実ったことを知ることができないなんて……!

これが、葬式✖️百合の醍醐味の1つだなと感じました。

『絶対に既読がつかないLINEにメッセージを書く』は、嬉しさと苦しさが渦巻く心情が表現された行為で、とてもよかったです。

 

また《白い葬式》における『白』には、以下の2つの意味が込められているのではないかと考えました。

  • 本来なら両想いだと知れたタイミングから、ただの友達ではなく、両想いの2人としての日々が始まっていく。しかし、そのタイミングは葬式であり、両想いの2人の日々が描かれていくことはない=両想いになったあとの2人の日々は、いつまでも“まっさら"=白
  • 主人公以外は、故人の本当の姿を知らない=虚像への思いがほとんどの葬式=ある意味で虚無=白

 

他には「自分を慕わないから好き」は、偶然の縁だけでない、その相手だからこその必然性や唯一性も感じられて好きでした。

あと「お経を聴き入っていそう」などの部分は、独特な感性で面白かったです。

 

Phalaenopsis

異質で粘っこい、そして何より深すぎる愛に、戦慄した作品でした。

帰りの新幹線で読んでいたんですけど、顔を歪めざるを得なかったです。

まぁそういうのも嫌いじゃないですけどね。むしろいけるまであります。

 

前話の『白い葬式』の対を成す、葬式百合のもう1つの醍醐味がこれなのでしょう。
「死者から一方的に想いを渡してくるという点が共通していながら、まったく別の感情が呼び起こされてたのは圧巻でしたね。

葬式✖️百合の可能性や、作者の方々の個性を感じられました。

 

・無視じゃなくて返事してくれただけで嬉しい
・どんな形であっても構ってくれて嬉しい
・どんな形であっても記憶に残り、想っていてくれていれば嬉しい
など、盲目的で自分本位な想いを抱く人の解像度が高くてよかったです(震え)。

 

そして極めつけは、最後のページの下段です。

「必ず会いに行きます」は、そう言われた時点でもう忘れられなくなりますよね。

「私以上に貴女を愛する人は現れないでしょう、だって貴女のために死ねる人は出てこないのですから」は、強すぎるので禁止カードに指定しましょう(震え)。

 

あ、『Phalaenopsis』は『胡蝶蘭』で、花言葉には「純粋な愛」がありました。

まさに、純粋な愛(※特質系)を存分に味わえる作品でしたね。

 

 

春のあいだに咲いていて

切ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。

 

切なさがこれでもか凝縮されていたうえ、百合描写も秀逸な作品でした。

こういう切なさを感じられる百合は大好きなこともあり、本アンソロジーの個人的1位とさせていただきました。

 

まず、各キャラクターの属性というか、構図がよかったです。

  • 想い人を忘れようとし新たに恋人を作ったけど、それでも忘れられなくて、本当は会いたいけど会わない選択をした故人
  • 恋人に別に想い人がいることを察しながらも付き合い続け、想い人に想いを伝えることにした恋人
  • 死後に親友の想いを知る主人公

全員切なすぎるだろっ……!!

 

ミルクティーの「悪くないね」「さっきよりおいしいかも」のやりとりも、かなりよかったです。

この仄かに香る百合描写、最高すぎますね。

 

「うそ!卒業祝いのジョーク!」のあたりも、私に刺さりました。

「告白したけどダメそうな空気を瞬時に察し、冗談だったことにしてなんとか軌道修正して、友達のまま一生すごす選択をした」のかなと想像し、胸が締め付けられました。

「もう少し待ってみてもよかったんじゃ」と思ってしまうほどの速さの軌道修正が、辛さを助長しています。

あまりにも“百合の切ない面の教科書"すぎて好きです。

 

そして一番好きなのは、雪乃が乙花にキスをしたシーンです。

『本当は別に想い人がいるけど、叶わないから、自分を納得させ楽になるためにした、通過儀礼的なキス』という情報に、胸がいっぱいになりました。

このような感情が込められたキスは初めてで、新鮮かつ至高の味わいでした。

端的に、最高です。

加えて、自分のためのキスだけど相手のことを考えて「ごめん」って謝っちゃうのも好きだし、「でも今は私を見てくれていたからよかった」も好きです。

 

『春のあいだに咲いていて』は「咲いている時間よりも散っている時間のほうが長い桜」

に「ただ楽しかった可能性のある状態よりも、辛い失恋状態のほうが長い恋」を当てはめているのかなと思いました。

 

改めて、すごくよかったです。切なくて苦しくなる百合も最高だし、切なさや苦しさが込められた百合キスもまた最高なんですわ。

 

『女の子同士で付き合うとかありえない』という理由でわたしを振った幼馴染が女子のことを好きになったようなので、一晩で片思い相手を突き止めたいと思います!

コミカルなタイトルとは裏腹な、切なく美しい百合物語で、胸を熱くさせられました。

 

本作は、決してハッピーではない、いわゆるメリーバッドエンドな味わいです。

しかし、その結末を形成した感情は、紛れもない深い想いであり、それゆえに美しいものでした。

 

  • 相手のことが大切だからこそ、自分で妥協せず、もっと素敵な人を探して欲しい
  • 一時だけだったとしても、誰よりも好きな人のそばにるには、練習台だったとしても彼女でいるしかなかった
  • 万全の状態で望めないのなら、告白を躊躇ってしまう

これらは、明るく幸せなものではない、間違っているかもしれない感情です。

しかし想いの強さは確かなのです。

そんな感情が折り重なってできた結末は、ハッピーではなくとも、素敵なものであると、私は思います。


また、恋人の練習という存在にも、胸を熱くさせる意味があったというのが好きでした。

他にも「楽しそうに話してくれるから分からなくても聞いていた」や「好きな相手が喜んでくれたから、これからも喜んでもらえるように勉強し、果てには助けられる可能性を見出した」も好みです。

あと、手紙を燃やしてあの世に届けるという行為が、オシャレで好きです。

 

余談ですが『寄稿者紹介』を読んで、タイトルの空気感に納得しました笑

私も好きですよ、みかみてれん先生の作品。

 

見習い花葬師リズと可憐な親友

ファンタジー世界での葬式や、葬式を主導するキャラクター視点の物語は初めてで、新鮮でした。

 

どちらかというとハッピーに傾いた結末だったのもよかったです。

『友愛か恋愛か分からない』という百合の王道的な醍醐味がベースにあり、切なさと愛おしさを堪能できました。

もし花葬する選択をとらなければ、互いに一生想いを伝えられず、恋愛的な意味で両想いだと分かり合えることはなかったと推測できます。そう考えると、素敵な決断だったなと、胸が熱くなりますね。

やっぱり想いを伝える百合キスは最高です。

 

恋する宝石に

「最後の物語の味わいがこれ…だと…!?」となった、独特な味わいの作品でした。

 

読むにつれて「普通じゃない独特な感性の主人公が相手を振り回す話」から「ヤバいやつ✖️独特なやつ」の物語に変わり、戦慄しました。

 

また、タイトルの『恋する宝石に』は「雪に恋する、宝石(になる病を患った夏目)に、雪が魅せられ飲み込まれる話」と思えます。

しかし「雪は恋する、宝石に。(倒置法)」と読むと「雪が恋していたのは、夏目自身ではなく、あくまで宝石」とも捉えられます。

このことから、本作の“歪さ"を表現しているタイトルだなと感じました。

 

『寄稿者紹介』を読んでみて、本作の味わいは、確かに入間先生味があるなと納得しました。

なんというか「自分の中で腑に落とそうとすると、ヌルっと避けていくような」ハマりきらない独特さが、入間先生のものに通じるなと思ったんですよね。

例えるならば「階段があると思って踏み出したらなかった」みたいな感じでしょうか。


関連して、キャラクターの行動指針を、明確に「そういうことね」と理解できないものに仕上げられていたのが秀逸でした。どこか普通ではない、歪さを孕んだキャラクターの造形の深さを感じました。

というのも、読んでいてどこか「うーんそうじゃないんだよな」感を抱いてしまうんですよね。

例を挙げてみると、「え、結局会っちゃうの?」とか、「物事を円滑に進めたいのなら、もっと工夫できたところがあるのでは…?」とか、「包丁出されたくないと思ってるけど、完全に取り入ろうとしているかというと、そういうわけではなさそうだよね」とか、思ってしまうわけです。

こんな感じで、簡単には一貫性を形成させてくれないんですよね。

そしてこのことは、裏を返せば「普通とは一線を画すキャラクターを精巧に描けている」と捉えられます。

常識的に見て一貫してないように見えるが、それゆえに当人の中では独特な線引きがあることを想像させてくれて、キャラクター作りが巧いなと思いました。

 

あと「『綺麗だよ』じゃなくて『綺麗だね』って言ってほしい」は、めちゃくちゃめんどくさくて好きです。

 

おまけ:寄稿者紹介を読んで一言二言

・やみくもさん

まさに入間先生節で形成された方だという印象を受けました。前述した通り、入間先生味を感じられました。

 

・はるはるさん

私も初めて百合キスを見たのは『桜trick』だったと思います。

でも、百合キスに本格的にハマったのは『プリズマ⭐︎イリヤ』です。(唐突な自分語り)

 

・湖柳小凪さん

圧倒的“信用百合オタク感"を感じました……!笑

好きな食べ物ってそういうことじゃないと思うんですけどね……。でもまぁ、質問の意図である「あえて百合以外の質問をして、作家の個性を引き出そう」は、達成できているからヨシっ!

 

・霜月このはさん

温めていたアイデアが、私の文フリ初参加のタイミングで形になるなんて……!

何度でも言いますが、とても好きな作品でした。

 

・ろぺごろうさん

(Q3の回答について)

まさかの、軸となるものから決めるタイプ……!

「米やお酒」ではなく、あくまで「米やお酒に合うもの」なあたり、個性を感じました。

「『可愛い女の子がたくさんいるから』じゃなくて『女の子✖️女の子だから』百合が好き」ということなのだろうか。(考察オタク)

 

・しぎさん

(Q1の回答について)

その発想、とても素敵ですね。いただきます。(?)

 

・七雪凛音さん

(Q1の回答について)

正直なことを言うと「二次創作で百合小説を書き始めたきっかけ」が気になってしまいますね……笑

それで始めて7年くらい書き続けているから、なおのこと気になる……!

 

 

最後にXにて投稿した「葬式✖️百合」というテーマの所感を掲載しておきます。

 

 

以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

文学フリマ東京40での購入作品の感想は、今後も投稿していく予定です。

では、今後もよろしくお願いします。