1. はじめに
マズラプです。213回目の投稿になります。
今回は、ライトノベル「週に一度クラスメイトを買う話 〜ふたりの時間、言い訳の五千円〜」を読んだ感想を書いていきます。
本作品を読んで、特に印象に残った以下の3つのことを挙げていきます。
①『独特だな〜→百合?→百合だ!』な、独特な関係性
②命令する側が優位に立っているとは限らない
③謎解き感覚で楽しめる「語り部が入れ替わる進行」
どちらかというと、作品の紹介というよりは、感想や感じた魅力を書いて発信することで、少しでも作者の方の励みになればいいなというような趣旨の記事になっています。
作者の羽田宇佐 先生並びに関係者のみなさんに届け!この思い!
作者の方に関わらず、読んでいただけるととても嬉しいので、どうぞ読んでいってください。
2. 「週に一度クラスメイトを買う話 〜ふたりの時間、言い訳の五千円〜」を特に読んで印象に残ったこと3選
①『独特だな〜→百合?→百合だ!』な、独特な関係性
1つ目は、本作品の方向性について、印象に残りました。
読み始めた段階では「なんだこれ…すごく独特な作品だな…」という印象を受けました。
しかし、読み進めていくうちに、この作品のやりたい百合が示されていき、最終的には「素晴らしい百合だ!!」と称賛の雄叫びをあげていました。
独特だな〜(〜第二話)
序盤は、とにかく「独特な雰囲気の作品だな〜」と思っていました。
第一話からいきなり足を舐め出したのにはかなり驚きました。
しかしながら、命令により行われる行為自体はイチャイチャに該当するものの、互いに恋愛的な感情は持っておらず、心理描写においても相手の好きなところを挙げるどころかネガティブな感情ばかりが列挙される有様でした。
そういった点から、この時点では「自分よりスクールカーストが上の仙台に命令することで、無意識に自己肯定感を高めようとしている宮城」と「単純に宮城の言動に興味がある仙台」の特殊な関係の話なのかなと考えていました。
これも一種の百合かな?(第三話〜第六話)
しかし、物語を読み進めていくうちに、「これも一種の百合なのかも」と思うようになりました。
宮城は「鬱憤を晴らしてくれる存在」として、仙台は「自分を演じずにいられる場所を提供してくれ、気を遣わなくてもいい存在」として、互いに互いを必要としていることが明らかになっていきました。
また、深層心理では、宮城は「寂しさを紛らわしてくれる存在」、仙台は「自分を必要としてくれる、本当の自分を見てくれる存在」として、互いを必要としていた様子も見受けられました。
そして、2人とも関係が急に終わってしまうことは避けたいとも考えていました。
これは、かなり仲が良いといえ、百合と言っても差し支えないような関係性だと言えます。
しかしそうはいっても、まだはっきりとした恋愛的感情や互いへの強い好意などは描写されていませんでした。
このことから、この時点では「恋愛感情はないが互いに互いを必要としている、百合の一種」かなと考えていました。
これは百合だ!!(第七話〜)
そんな中、第七話まで読み進めたとき、「これは百合だ!」と確信しました。
宮城が、自分の知らない仙台の姿を知って嫌な気持ちになったり、常に仙台のことを考えてしまったり、仙台に命令をすることではなく仙台と過ごすこと自体がしたいことになっていることが示唆されていたりしてきたのを見て、「もう仙台のこと好きじゃん!」と心の中で叫んでいました。
そして、これらも含めて、実は本作品では、百合(恋愛)作品の鉄板が描かれていたことが分かりました。
・自分しか知らない相手の姿を見られる優越感を感じる
・自分の知らない相手の姿があることを知ってモヤモヤする
・ついつい相手のことを考えてしまう
・相手のことを意識してしまう
・一線を越えてしまったら、関係が壊れてまうのではないかと怖がってしまう
・この気持ちがなんなのかわからない状態に陥る
など、本作品は、シチュエーションが特殊なだけで、しっかり百合の流れを踏襲していたのです!
このことに気づいたとき、作者の方の手腕に脱帽し、心の中で盛大に拍手を送っていました。
いやぁ、小説ってすごいですね!
また、本作品の「恋愛的な言葉や感情ではなく、命令という行為を中心に関係が進展していく」作風を、『非言語型無自覚百合作品』だ!と勝手に名付けました。
我ながらうまく言語化できたのではないかと思っています。
はい、それだけです。では次にいきましょう。
ついにキス!したけど…
そんなわけで、最後の第十話で2人はついに、百合作品の醍醐味の1つであるキスをしていました。
しかし、キスをし一線を超えたあとでさえ、「互いに気に入っていることが分かった」程度の空気感で終わっていたのが、また印象的でした。
それが本作品らしさであり、魅力なのだなと思います。
そんな宮城と仙台の関係性も好きになっていました。
今後の2人の行く末も見守っていきたいですね。
②命令する側が優位に立っているとは限らない
2つ目は、命令する側が必ずしも精神的優位に立っているとは限らないということが印象に残りました。
本作品は、「5000円を払う代わりに、宮城が仙台に命令をする」という関係をベースとして物語が進んでいきます。
この関係においては、一見宮城が優位に立っているように考えられます。
しかし、この関係はそう簡単なものではないのだなと思わされました。
命令される側が嫌がらずすんなり命令に従う、命令される側が命令することを強要させるなどで、命令される側が精神的優位に立つといった構図が出来上がっていたのが印象的でした。
人間関係とは奥が深いものですね。
宮城と仙台の間で精神的優位に立つ側がコロコロ変わっていく様子が、読んでいて面白かったです。
個人的には、宮城が優位になっている構図の方が、よりゾクゾクして好きです。
③謎解き感覚で楽しめる「語り部が入れ替わる進行」
3つ目は、一話ごとに語り部が入れ替わる進行が印象に残りました。
本作品は、一話ごとに、宮城と仙台の間で一人称視点が入れ替わっています。
これにより、前話の行動の意図が分かるような構成になっていました。
そのため「どうしてあんな行動をしたのだろう」→「そういうことだったのか!」という具合で、謎解きをしているかのような感覚で読み進められ、楽しむことができました。
「『不快な感情を抱く』ということは、『自分に感情を向けてくれている』ということなため、好き」「宮城が体を触ることを目的としていたような命令をしたのは、仙台が命令もしてないのに指を舐めてきたため、もっとスキンシップをしてもよいのかなと考えたからだったこと」など、語り部が入れ替わることで、そのときの真意が語られる流れはよかったです。
中でも印象的だったのが、第四話で「宮城が仙台にポップコーンとサイダーをぶちまけた」際の心情です。
正直第四話を読んだときは、宮城の意図が分からず、困惑してしまいました。
しかし、第五話で宮城視点の話を読んだとき、「急に関係が終わってしまう怖さをなくすために、わざと関係を終わらせようとした」からであることが分かり、なるほどと腑に落ちました。
このことは宮城の母が蒸発したという過去も影響していると考えられますね。
これは『将来起こるかもしれない辛さを回避するために、今ある幸せを捨てる』行為とも言え、強い切なさを感じました。
異常ともとれる行動の裏側には、切実な思いがあったことが分かり、本作品の構成の良さを感じました。
3. おわりに
今回の内容は以上になります。ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回の感想ですが、3選と言いながら、書きたいことを書いていったらすごい文量になってしまいました。
それくらい本作品が魅力的だったということでご了承ください。
どうやら今回だけで終わりではないようなので、今後の展開にも注目していきたいと思います!(ゴリ押し)
では、今後もよろしくお願いします。
追記
「週に一度クラスメイトを買う話 2 〜ふたりの時間、言い訳の五千円〜」の感想も書きました。
気になる方はこちらもどうぞ!
4. 関連記事