1. はじめに
マズラプです。152回目の投稿になります。
今回は、漫画「私を喰べたい、ひとでなし」第3巻を読んだ感想を書いていこうと思います。
今回の第3巻も、伏線が回収され、物語がまた一歩進展したような内容だったと感じました。
そんな第3巻を読んだ中で、特に印象に残ったことについてお話ししようと思います。
どうぞ読んでいってください。
※書いていて、思ったより長くなってしまいました。一番言いたいことは「現世への未練がより薄くなった比名子」の内容ですので、そこまでスクロールしていただくことを推奨致します。
また、以前このような記事も書いております。今回の内容にも関連がありますので、合わせて読んでいただければ幸いです。
2. 「私を喰べたい、ひとでなし」第3巻を読んだ感想
一向においしくならない比名子
第3巻は、美胡に関する伏線の回収が中心の内容となっていました。
そんな第3巻を読んで、最も印象的だったのが、『一向においしくならない比名子』です。
今回は、そのことについて、私の解釈や考察を交えながら、お話ししていこうと思います。
美胡が妖怪で“よかった"理由
比名子は、第12話『別つ海溝』にて、「美胡ちゃんが妖怪でよかった」と話しています。
そしてそれは、「私ひとりくらいいなくなっても きっと寂しくないでしょ?」に繋がります。
つまり、比名子は、「美胡が妖怪だった場合のほうが、美胡が人間だった場合よりも、自分が死んだ際に寂しさを感じにくいから“よかった"」と感じていたということになります。
この理由に至るまでの比名子の思考について、作中よりもう少し深掘りしようと思います。
時間感覚が違う
比名子は、「きっとこの時間だって一瞬だよね?」と口にしています。
妖怪と人間では、寿命の長さが大きく異なります。
妖怪は、人間よりも遥かに長い寿命であると考えられます。実際本作でも、美胡が遥か昔から比名子の住む街で生きていたことが語られています。
そしてその寿命の違いが、時間感覚の違いを生み出すと考えられます。
他作品ではありますが、妖精と巨人がついこの間会った人間だと思った人物は、実際に妖精と巨人と会った人物の子孫でだった、というようなことも起こり得ます。
このように、人間より遥かに寿命が長い妖怪は、人間とは違った時間感覚を有していると言えます。
このことから、比名子は、美胡が比名子を友達として慕っているのも、美胡の人生の中ではほんの一瞬の出来事であり、人間でいうところの毎日の食事メニューのような、すぐに忘れてしまう、取るに足らない出来事であると考えたと思われます。
土地神に近しい存在
比名子は、「私以外にも大切に想う人が沢山いるよね」とも語っていました。
美胡は、以前捕縛されて以来、比名子の住む街の住人を助ける、土地神とも言えるような存在になっていました。
美胡の回想で、おにぎりを渡してくれた女の子の笑顔を見て、心から「この街の人々を助けていこう」と心境が変化したようなシーンは、印象的でしたね。
ということはつまり、美胡は、この街の住民全員を満遍なく気に掛けており、美胡にとっては住民全員が皆、大切な存在であると言えます。
そしてこのことから比名子は、大切な存在は自分だけではない、であるならば、自分が死んだとしても、美胡は過度な精神的ダメージを負わないと考えたと思われます。
もし美胡が普通の人間だったなら、美胡は比名子と多くの時間を過ごしているため、美胡にとって、比名子の存在が他の住民よりも大切な存在と位置付けられている可能性が高いと考えるのが自然です。
その場合、比名子が死んでしまったら、美胡は精神的に大きなダメージを負ってしまうかもしれません。
しかし、美胡がこの土地を守る妖怪であるならば話は別、比名子はそう考えたのでしょう。
汐莉の存在
そして最後に、汐莉の存在も重要になっています。
汐莉は、美胡と同じ妖怪です。
妖怪同士であるならば、長い時間を一緒に過ごすことができるため、互いの心の拠り所になるかもしれません。
比名子は、汐莉が、自分が死んだあとの美胡の友達に近い存在になってくれると考えたと思われます。
読者目線、汐莉と美胡はめちゃくちゃ仲が悪そうむしろ悪いように見えますが、汐莉が美胡を殺さないでいてくれたことや、比名子がいる前では2人はそれなりに過ごしていることから、友達とは言えずとも、敵対することはないのではないかと、比名子は考えたのかもしれません。
とはいえ、個人的には、比名子関連の利害が一時的に一致しているだけで、比名子がいなくなれば、すぐに殺し合い始めてもおかしくないような、一触即発の関係に見えてしまいます…。
まぁ、人間目にする頻度が多い相手には好意を抱くようになりやすいっていう話(ザイオンス効果)もありますしね!案外なんとかなるかもしれませんね!
妖怪にも適用されるかは知りません!!
現世への未練がより薄くなった比名子
上記で述べてきたことから、比名子は、美胡が妖怪だと知ったことで、自分が死んでも美胡が心に深い傷を負うほど悲しまなさそうだと考えたと言えます。
そしてそのことにより、比名子の現世への未練がさらに薄くなり、死を願う気持ちが増したと考えられます。
美胡が自身が妖怪だということを打ち明け、比名子と美胡の友達としての関係がより深いものになったことで、比名子の「死んで家族のもとに行きたい」という気持ちは僅かでも揺らいだかのように感じられました。
しかし、実際は、生きたい気持ちが増すどころか、むしろ現世への未練が薄れ、逆に死にたい気持ちが増していたのです。
比名子にもっと生きたいと思わせ、比名子の体をおいしくさせたい汐莉の思惑通りにはいきませんでした。
比名子の体は、おいしくなるどころか、むしろまずくなっていたんですね…。
実は比名子の心のどこかには気の迷いがあるのでは?と考えたくもなりましたが、幕間『親愛の形』における比名子の心情や、比名子の見せる晴れやかな表情を見るに、そんなことはないことが痛いほど分かりました。
「きっと寂しくないでしょ?」や「本当に安心した」のときの比名子の笑顔は本当に印象的で、私の胸に突き刺さりました。
あんなに晴れやかな笑顔で「死にたい気持ちが増した」という旨の内容を話す姿を見ていると、読者の私としては、『喜べないけど喜びたいけどやっぱり喜べない…』ような、非常に複雑な感情になってしまいます。
しかしながら、それもこの作品の魅力の1つであると思います。
私としては、そんな複雑な感情を抱くことも感動の1つであり、かわいいや萌え、面白いとはまた違った心地良さを感じられて好きです。
そんな感情を抱かせてくる作品もしっかり推していきたいと思います!
3. おわりに
今回の内容は以上になります。ここまで読んでいただきありがとうございました。
一向においしくならない比名子ですが、新たな敵?も現れそうですし、今後の展開も非常に気になります。
この記事を投稿したら早速第4巻購入しようと思います!
では、今後もよろしくお願いします。
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