1. はじめに
マズラプです。271回目の投稿になります。
今回は、ライトノベル「獄門撫子此処二在リ 獄門撫子此処二有リ」を読んだ感想を書いていきます。
・「獄門撫子此処二在リ 獄門撫子此処二有リ」(伏見七尾, おしおしお, 2023, ガガガ文庫)
本作品を読んで特に印象に残った以下の3点について書いてきます。
①圧倒的な和風怪奇譚の世界
好きな技は『こんじき』!
好きな六道鉄鎖は『人間道』!
②『撫子』と『アマナ』だからこそ紡げた物語
アマナが普通の人でないからこそもたらされたもの
撫子が普通の人でないからこそもたらされたもの
互いの存在を肯定できるようなかけがえのない出会い
③「あなたと出会わなければ…」ネガティブな言葉の裏に見える強い思い
どちらかというと、作品の紹介というよりは、感想や感じた魅力を書いて発信することで、少しでも作者の方の励みになればいいなというような趣旨の記事になっています。
作者の 伏見七尾 先生並びに関係者のみなさんに届け!この思い!
作者の方に関わらず、読んでいただけるととても嬉しいので、どうぞ読んでいってください。
2. 「獄門撫子此処二在リ 獄門撫子此処二有リ」を読んで特に印象に残ったこと3選
①圧倒的な和風怪奇譚の世界
1つ目は、圧倒的な世界観が印象的でした。
本作品は、圧倒的な知識量に裏打ちされた壮大な和風怪奇譚の世界が広がっていて、世界観だけでも十二分に楽しめました。
特に、各話ごとに登場する怪異の姿形や攻撃手段が印象的で、和風テイストのもと一癖も二癖もあるものに仕上げられていて、作品の世界観に浸ることができました。
系で形作られた魚とか、三色の光による攻撃とか、「そんなの何を食べていたら思い付くんだ!?」と思ってしまうものばかりで、もはや感動していました。
1つ1つのキャラクター、技、道具などが、この作品の世界を彩る存在になっていたと思います。
好きな技は『こんじき』!
そんな中で、私が最も好きだと感じた技は、幻術の極技『こんじき』です。
作中では『心の傷を体の傷とする奥義』と称されていた技ですね。
特殊能力バトルものにおいて、精神干渉系の技は、基本的に物理的にダメージを与えられないイメージがあります。
しかしこの技は、精神に干渉することで、直接物理的ダメージを与えることができるのです。
その点が、画期的かつ強力だと思いました。
相手がどんなに強靭な肉体や強固な防御をしていても、ひとたび精神に干渉さえできてしまえば、それらを無視して大ダメージを叩き込むことができるのは魅力的ですね。
そして何よりも、「相手が『良い人』であればあるほどダメージを負いそう」という点が気に入りました。
心に痛みを感じる場合の多くは、後悔や罪悪感などが原因であると思います。
そしてそれらは、善人つまりは『良い人』であればあるほど、感じやすいと考えられます。
したがって、こんじきは、相手が良い人であるほど効果を発揮する技と言えるでしょう。
そんなこんじきで致命傷を負った撫子は、自分の生い立ちを憎み、母に対して強い罪悪感を抱いていたことが分かりますね。
対象への効き具合から、間接的にその人がどれくらい精神的な弱みを持っているかが明らかになるのも面白いなと感じました。
また、相手が「良心の痛みや過去のトラウマなどない真の悪人」だった場合には、効力を発揮しなさそうな点も、中ボスの技といった感じで、個人的に好きです。
好きな六道鉄鎖は『人間道』!
また、撫子の武器「六道鉄鎖」の中でどの『道』が最も好きかについても触れておきたいと思います。
ズバリ、私が最も好きなのは、『人間道』です。
人間道の鎖は、さまざまな武器の形に変化する効果を持っています。
破壊力や派手さは他の鎖に劣るものの、多彩な攻撃から防御までこなす器用さには目を見張るものがありました。
そのような、人間道の「状況に応じて様々な形に変化する」という性質が推しポイントです。
この人間道の鎖の性質から「圧倒的な力はないものの、状況に応じて最適な状態に変化することができる。それが人間なのだ」というような解釈もできるかもと思いました。
そう言われると、なんだか自分が人間であることが誇らしくなってくるじゃないですか!(※あくまで個人の意見です)
こう考えたとき、なんだか人間道の鎖に愛着が湧きました。
暴走覚悟の最後の切り札的存在の『地獄道』も捨てがたいですが、私は人間道を推します!
②『撫子』と『アマナ』だからこそ紡げた物語
2つ目は、この物語は、『撫子』と『アマナ』だからこそ描くことができたのだと感じ、印象に残りました。
撫子もアマナも普通の人間に憧れていました。
しかし、私としては、2人が普通の人間ではない、今の『撫子』と『アマナ』だったからこそ、2人は出会い、物語が紡がれていったのだと思います。
アマナが普通の人でないからこそもたらされたもの
アマナは、「自分よりもきれいな存在だから」と、撫子の存在を肯定していました。
これは、「アマナがただの普通の人間ではなかったこと」が良い影響を及ぼしていると考えられます。
ただの普通の人が言ったのなら、この言葉は、誰にでも言える薄っぺらい慰めになっていたでしょう。
しかし、アマナが九尾の霊魂を発現していたことで、心からの言葉であることが保証され、撫子の心に届くものになったのではないでしょうか。
自分の生を否定する撫子とって、アマナの言葉は、大きな救いをもたらしたのではないかと思います。
撫子が普通の人でないからこそもたらされたもの
撫子が鬼の血を引いていたからこそ、アマナは『怪奇集めの用心棒』として、撫子を誘うことができたのだと思います。
そもそも、撫子が普通の人間だったら、アマナと出会うことすらできていなかったでしょう。
そして、撫子は、アマナの事情を把握した上でアマナを求めることで、アマナの拠り所となることができていました。
もし暴走したら自分がアマナを取り戻すなんて言えたのは、鬼の力があったからこそですし、やっぱり撫子じゃなきゃだめだったんだと思います。
互いの存在を肯定できるようなかけがえのない出会い
鬼と人の狭間にいる撫子、狐と人の狭間にいるアマナだからこそ、この関係は成立したんだと思います。
アマナも撫子も、もっと自分のことを好きになってほしい。
アマナにも撫子にも、一緒にいたいと思ってくれる、大切な相手がいるのだから。
そう思わずにはいられないほどに、お互いの存在の肯定につながるような、かけがえのない出会いだったと、私は思います。
③「あなたと出会わなければ…」ネガティブな言葉の裏に見える強い思い
3つ目は、「ずっと鬼でいられたのに」をはじめとしたネガティブな言葉を、撫子が放った場面が印象に残りました。
この場面から、撫子の思いの強さが伝わってきて、胸がいっぱいになりました。
私の印象では、この場面は「もっと一緒にいたい」というような言葉を使う流れだと感じました。
しかし、撫子は「あなたと出会わなければ」や「逃がさない」といった言葉を使っていました。
それはなぜなのだろうか考えてみました。
その結果、「あえてネガティブな言い回しを使うことで、思いの強さを感じることができるのではないか」と思い至りました。
「一緒にいると楽しい」ではなく「一緒にいないと辛い」とすることで、同じような内容ですが、後者の方がよりことの重大さを感じられると、私は思いました。
「これからも関係を継続させてなくてはならないものにしたい」ではなく「もうなくてはならないものになっているから関係を終わらせることを許さない」というか、
「継続の希望」ではなく「喪失の拒絶」というか、
失うことの辛さを語ることで、今得ていることの大切さを表しているというか、
ピタッとハマる言葉が見つかりませんが、そのようなニュアンスが含まれた言葉だったのではないかと考えました。
とにもかくにも、アマナは撫子にとって、かけがえのないものになっていたことは確かだと思います。
それほどまでに、撫子にとって、アマナの存在が大きなものになっていたのですね。
本当に2人が出会えてよかったなと、改めて思いました。
3. おわりに
今回の内容は以上になります。ここまで読んでいただきありがとうございました。
上記の内容以外に、本作品では、思わず笑ってしまうような面白おかしい場面もたくさんありました。
「ツンがあまりにも強すぎるツンデレな桐比等さん」「撫子とアマナの軽口の応酬」「食べ物への食い付きがすごい撫子」あたりが、特に面白かったです。
もっと撫子とアマナの物語を見ていたくなりました。
続編の発売を心から願っています!
また、本作品はコミカライズでの展開も決定しているようです。
そちらも楽しみですね。
では、今後もよろしくお願いします。
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