1. はじめに
マズラプです。226回目の投稿になります。
今回は、ライトノベル「やがて君になる 佐伯沙弥香について」を読んだ感想を書いていきます。
※ネタバレありです
本作品を読んで印象に残った以下の3つのことを挙げていきます。
①好きを知らない人が好きを向けられたら
②柚木先輩のやっていることがえげつない件について
③「嫌いではないなら好きかも」理論の危うさ
どちらかというと、作品の紹介というよりは、感想や感じた魅力を書いて発信することで、少しでも作者の方の励みになればいいなというような趣旨の記事になっています。
作者の 入間人間 先生、仲谷鳰 先生並びに関係者のみなさんに届け!この思い!
作者の方に関わらず、読んでいただけるととても嬉しいので、どうぞ読んでいってください。
2. 「やがて君になる 佐伯沙弥香について」を読んで特に印象に残ったこと・考えたこと3選
①好きを知らない人が好きを向けられたら
1つ目は、沙弥香が柚木先輩に告白されたあとの思考が印象に残りました。
片想いを告げられた側の心理描写は珍しいような気がして、印象に残りました。
・おすすめを受け入れてくれる『私』が好きなのだろうか。それなら今までの『私』のことは好きではないのか
・先輩が好きだと言ってくれるならそれに応えようと思う
・『相手の望む自分に変わっていくことに恐怖や疑問を抱かないこと』が、誰かと恋をするということなのか
など、興味深い切り口の内容が多く、印象的でした。
好きを知らない人が一方的に好きを向けられたときはこう思うのだろうかと考えながら読んでいました。
相手中心の沙弥香の恋愛観
沙弥香にとっての初めての恋愛は、相手の好きな自分を演じることが中心に据えられていたのが印象的でした。
沙弥香は、柚木先輩が喜ぶような行動はすれど、沙弥香が柚木先輩にして欲しいことは考えていなかったように思います。
これは、沙弥香は柚木先輩を求めていなかったということなのではないかと感じました。
そしてこのことから私は「それって本当の恋愛なのだろうか」「沙弥香は柚木先輩に対して『好き』を抱いていないのではないか」と、疑問を抱かずにはいられませんでした。
これは沙弥香が好きを知らないことによる弊害なのでしょうか。
まぁ、私は恋愛経験ゼロなのでよくわからないんですけどね!☆
②柚木先輩のやっていることがえげつない件について
2つ目は、柚木先輩のやっていることがえげつないなと思い、印象に残りました。
衝撃を受けた柚木先輩の一言
「遊びでこういう付き合いをするのはよくないと思うの」
この言葉を読んだとき、心にズシンとくるような感覚を覚えました。
それほどまでに、衝撃を受けた言葉でした。
私も沙弥香と同じく、『遊び』という言葉が一番印象に残りました。
これは、先輩と沙弥香との間には認識の違いがあったということを意味しており、好きではなくなったなどの気持ちの変化による失恋よりも、心にくるなと思いました。
沙弥香は先輩の好きという言葉を受け止め真摯に向き合っていたのに、先輩は沙弥香自身のことはそこまで考えておらず、結果として沙弥香が勝手に変わってしまったような形になってしまっていたのですね。
沙弥香の真面目さが悪い方向で噛み合ってしまったなぁと思いました。
沙弥香に感情移入して読んでいたので、私もかなり胸が苦しくなりました。
恋に恋することの残酷さ
作中で、沙弥香は「先輩が恋していたのは、私じゃなく恋というそれそのもの。」と述べていました。
この言葉を受け、「恋に恋すること」の残酷さを感じました。
恋に恋するという言葉は、なんだか乙女チックで甘酸っぱいようなポップな印象があるかもしれません。
しかし、こちらが真摯に向き合っているのに、相手は恋に恋していたとしたら、たまったものではないなと思いました。
こちらは相手のことを考え、相手ありきの存在になっているのに、相手は行為そのもののことを考えていて、自分のことは見ていない。おまけに相手を傷つけているという自覚もないとなると、普通に失恋するより精神的ショックを受けてしまいそうです。
恋は2人でするもの
沙弥香と先輩の物語を受けて、恋は相手と自分の2人で成立するものであることを忘れないことが大切なのではないかと考えました。
恋は、自分だけでなく、相手もいて初めて成立するものです。
そして、相手も自分と同じ心持ちであるとは限りません。
遊びの延長として付き合っているのかもしれませんし、将来のパートナーとして真剣に交際をしているのかもしません。
この意識に違いが生じてしまうと、お互いにとってよくないことが起きてしまうと考えられます。
恋は相手を大きく変えてしまう可能性のあるデリケートなことであるため、このあたりの意識のすり合わせは十分に行なっておくべきなのではないかと考えました。
まぁ、私は恋愛経験ゼロなんですけどね!☆(2回目)
恋愛に縁のある方にはぜひ意識して欲しいな、なんてと思いました。
③「嫌いではないなら好きかも理論」の危うさ
3つ目は、「嫌いではないなら好きかもしれない」という考え方が印象に残りました。
沙弥香は、先輩と付き合うかどうか悩んでいたとき、「先輩と過ごすことを考えたとき、嫌悪感を感じていないのであれば、先輩のことを好きと思っているのかもしれない」というような思考をしていました。
私は、このような考え方は、危険性を含んだ諸刃の剣なのではないかと考えました。
人間関係は好きか嫌いかでははかれない
『◯か×か』『白か黒か』といった言葉を耳にすることもありますが、人間関係においては、このような考え方は適当ではないと思います。
「嫌われる勇気」(岸見一郎, 古賀史健, 2013, ダイヤモンド社)では、以下のようなことが書かれていました。
ユダヤ教の教えに、こんな話があります。「10人の人がいるとしたら、そのうち1人はどんなことがあってもあなたを批判する。あなたを嫌ってくるし、こちらもその人のことを好きになれない。そして10人のうち2人は、互いにすべてを受け入れ合える親友になれる。残りの7人は、どちらでもない人々だ」と。
このように、人間関係においては、好き嫌いの間に普通が存在するのです。
したがって、嫌いではないからといって好きかと言われるとそうではなく、普通である可能性も往々にあり、二者択一で判断するのは危険であると言えます。
また、『好き』にも、友人として好き、先輩として好きといった恋愛以外の『好き』が存在するため、仮に好きであったとしても、恋愛関係に踏み切って良いというわけではないと考えられます。
人の心は複雑なものですね…。
作品の話からそれて一体なんの話をしているんだとなってきましたが、要は人間関係や人の心というものは、非常に複雑で難しいものなのだなということを再認識したという話です。
しかしながら、そんな複雑な人の心だからこそ、様々な面白い物語も生み出されるわけで、悪い面だけではないようにも思えます。
このようなことを考える機会を与えてくれた本作品に感謝!
3. おわりに
今回の内容は以上になります。ここまで読んでいただきありがとうございました。
余談ですが、こちらの作品は、知人の方におすすめされたことがきっかけで購入しました。
原作漫画を最終巻まで読んだあと、こちらも面白いですよと紹介していただいた次第です。
柚木先輩とは別れることが分かっている状態だったので、読んでいてなかなか新鮮な気分を味わいましたが、十二分に楽しむことができました。
おすすめしてくれた方に感謝!
これからもおすすめしていただいた作品はどんどん読んでいこうと思います。
では、今後もよろしくお願いします。
4. 参考文献
・「嫌われる勇気 自己啓発の源流『アドラー』の教え」(岸見一郎, 古賀史健, 2013, ダイヤモンド社)
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